番組概要
「テナガザルの親子の絆」 小菅正夫(札幌市円山動物園参与)
番組詳細
円山動物園には、雄のコタロー、雌のラーチャがいます。この2頭の間に生まれたのがローラです。実はラーチャは密輸されて日本で育ちました。その後、動物園に保護されたのです。ラーチャ自身、親の愛情を受けて育てられたことがありません。過去には育児放棄や虐待を繰り返し、繁殖を諦めていました。今回のローラの子育ても、生後10日目を過ぎた頃には自然哺育の限界がきてしまったのです。 本来、霊長類は人工哺育をすべき
ではありません。しかし徐々に弱っていくローラを助けるために期間を限って飼育員が育てることを決断しました。人の体温や心音が伝わらないように、常に枕のような布を抱かせました。ミルクを飲んだローラは徐々に元気を取り戻していきましたが、心配だったのは母親のラーチャの気持ちが離れてしまうことです。ところがローラを連れて飼育員が近づくとラーチャだけでなく父親のコタローも一緒にじっとローラを見つめていました。
ローラを両親のもとに帰す日、母親のラーチャが力まかせに抱き寄せて最悪の事態に陥る心配も残っていました。しかし、ラーチャの行動は私たちの想像とまったく違っていたのです。ゆっくりとローラに近づき両手を広げて胸を出しました。そしてじっと待っているのです。その姿は「私の胸においで」と語りかけているようでした。ローラが抱きつくとラーチャはそっと抱き寄せてゆっくりと木の上にあがっていきました。
【講師】 小菅正夫(札幌市円山動物園参与) 【司会】 北村花絵(テレビ静岡アナウンサー) 【手話通訳】 石川ありす