番組概要
「いのちの読書録」 内藤いづみ(在宅ホスピス医)
番組詳細
私の人生を振り返った時、本との出合いを抜きに今の自分はないと思います。読書との出合いがなければ、ホスピスケアをイギリスで学ぶこともなかったかもしれません。私の代表作『あした野原に出てみよう』という本があります。この本には「つらいことがあって閉じこもっても、いつか必ず外に出られる日が来る」というメッセージが込められています。きっかけは私の父の死でした。父が突然、脳卒中で倒れて帰らぬ人になりました。
気丈に振舞う母。私も母に弱みを見せないように一度も泣きませんでした。しかし3ヵ月経って「父はもう帰って来ない」と気づいた時、母に聞こえないように布団をかぶって泣きました。毎晩泣いて、もう涙も出ないと思った時に、野原に出て頬をなでる風を感じて我を取り戻しました。花の香りや鳥の声に背中を押されて「父の分まで生きよう」と思えました。看取られる人の一番の願いは残された人たちが一日も早く笑顔になることです。
【講師】 内藤いづみ(在宅ホスピス医) 【司会】 北村花絵(テレビ静岡アナウンサー) 【手話通訳】 石川ありす